会議録全文
 

 

14 平成十三年六月定例会(平成十三年六月二十二日質問)

・首長、議員の多選禁止問題への取り組みについて  

[答弁] 知 事 浅野史郎君


    〔二十番 秋葉賢也君登壇〕
◆二十番(秋葉賢也君) 今からちょうど四年前にも、私は、民主主義の質と機能を高め、その健全化を一層推進していかなければならないという観点から、知事初め首長の多選禁止の制度化の問題について、過去の経過や多元的な論拠を明示しながら知事のお考えをお伺いいたしました。
 結論から申し上げますと、その中で私は、国が法律で全国一律に多選を制限するのではなく、条例により多選禁止ができることを法律で定め、禁止する期数についても条例で自由に定めることができるようにし、その判断や選択についてはそれぞれの各自治体の自主性にゆだねることが可能な方策が必要だとお訴えいたしました。更に、私の具体的な考えでは、とりわけ都道府県や政令指定都市のような大規模自治体においては、基本的に個別の自主判断にゆだねるにしても、積極的に対応していくことが望ましく、その際には四選禁止、すなわち三期十二年までを一つの区切りにすることが妥当ではないかと指摘し、知事のお考えをお伺いいたしました。
 知事は、基本的には首長本人に帰されるべき問題であり、多選すべてが弊害を生じるというふうには言いがたいと反論され、終始、首長本人が主体的に判断すべき問題であることを繰り返し力説されました。その上で、現状ではまだまだ議論の余地があるとして慎重な認識を示されました。しかしながら、地方分権の進展に伴って、地方自治体の首長の権限や責任が相対的に増大する一方、首長選挙における投票率の低さ、無投票再選が増加傾向にあるなど、首長の多選が原因の一端であるとして問題視する向きも多く、やはり首長の地位に長期にわたって一人の者がついていることは、国民の権利、自由を保障し、そのために権力を法的に制限するという立憲主義の理念に照らしても決して望ましいものではなく、四年たった今でも私の考えは不変であり、むしろますますその意を強くいたしております。
 そこで、重複いたしますが、前回の議論を踏まえながら、知事のお考えに変化はないのか、より踏み込んだ形で再度、この問題についてお伺いをしたいと思います。
 今から二百年以上も前になります一七八九年のフランスの人権宣言では、第十六条に、権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない社会は、すべて憲法を持つものではないとされ、近代立憲主義は、国民の自由のために君主の専制権力に制約を加えるものとされ、国民の参政権や基本的人権の保障、権力分立、法の支配などを要請するものでした。すなわち、人間の権利や自由を保障することと、人間の権利や自由を保障するために権力を法的に制限することは、立憲主義において不可欠の内容であります。
 一般的な学説では、この立憲主義における、権力を法的に制限することとは、国家の権力が、個人にせよ集団にせよ、だれかの一手に集中され、それらの者が余りに強大にならないようにするための制度を設けるということであり、国家の権力から国民の自由を守るという自由主義的な政治組織原理であること。積極的に能率を増進させるためよりは、消極的に、権力の乱用又は恣意的な行使を防ぐための原理であること。国家の権力及びそれを行使する人間に対して懐疑的又は悲観的であることという特性を有しております。日本国憲法を含めて近代憲法は、このような立憲主義に加えて、自由を根本的な目的とする民主主義や国民主権の理念と結合して発展してきました。
 こうした文脈から明白なのは、多選を禁止するということが、憲法上あるいは民主制に矛盾するものではないということであり、むしろ人間の権利や自由を保障するために権力を制限することが必要だということであります。
 多選禁止の問題には、このような憲法論を初め、立法政策論、政治統治論、地方自治論、政治倫理論などをめぐって多様な論点がありますが、大切なのは、主観的な感情論や観念論からこの問題を議論するのではなく、あくまでも立憲主義や民主主義の基本的原理を踏まえて、あるべき姿を論じていく姿勢だと思います。
 ここで、この問題に対する我が国の取り組み状況を簡単に振り返ってみますと、古くは昭和二十年代末から選挙のたびに国会や全国知事会などの場で議論されてきました。戦前の官選知事制から戦後の公選知事制に移行してから三度目の昭和三十年の統一地方選挙で相当数の三選知事の誕生が見込まれたために、その是非が争点になりました。国会においては、これまで過去三回にわたって多選禁止法案が議員提案されてきました。最初は、昭和二十九年、知事の三選禁止を内容とする公職選挙法の一部改正法案が緑風会から提案されたのを初め、昭和三十八年の第五回統一地方選挙の前にも世論の注目を集め、選挙後には自民党の有志により知事多選問題懇話会が結成され、再び立法化の動きが出始め、昭和四十二年には衆議院の自民党有志議員によって、今度は三選ではなく四選禁止の公職選挙法改正法案が提出され審議されましたが、法規制には全国知事会などから根強い反対に遭い、いずれも審議未了、廃案となってしまっております。
 その後、各政党内や民間団体などでさまざまな議論がなされてはきましたが、三度目は平成七年に、知事に加えて指定都市の市長も対象にした四選禁止の地方自治法及び公職選挙法の改正法案が提案され、参議院地方行政委員会に付託され提案理由説明などが行われましたが、継続審議には至らず、国会閉会に伴い廃案となったことは記憶に新しいところです。
 更に平成九年には、知事の多選禁止の条例化を公約の一つにして初当選した秋田県の寺田知事が、初議会においてみずからの四選禁止の誓約書を公表し、条例化実現に向けた法整備の必要性を問いかけました。同様に、ごく最近では、我が県の東和町の浅野町長が、今月十三日に開会した町議会の所信表明の中で、今後四年間の任期中に町長の多選禁止条例に取り組む考えを表明し、地方から議論を巻き起こしたいとして強い意欲を見せております。
 一方、平成九年に示された国の地方分権推進委員会の第二次勧告には、首長の多選禁止の法整備の検討が盛り込まれ、翌十年の地方分権推進計画にも取り上げられましたが、最終的には見送られ、昨年の四百七十五本に及ぶ地方分権推進一括法の中にその改正を見ることはできませんでした。しかし、余り目立たず、しかもゆっくりとした歩みではありますが、現職の首長みずからが多選禁止を表明するといった地方からの動向は、過去初めてのことであり、着実にその気運が高まりつつあるように思われます。
 ところで、これまで一般に多選の弊害として指摘されてきたことを要約いたしますと、一、人事権や予算編成権、許認可権、条例議案提出権などを初め、知事の絶大な権限を同一人物が長期にわたって独占することは、政治の独裁化を招き、立憲主義や民主主義の本質に反するおそれがあること。二、知事の個人的なつながりが県庁内外に扶植され、人事が偏向し、行政が側近政治化し、県政が私物化される危険があること。三、行政がマンネリズムに陥り、組織機構が硬直化し、職員の知事に対する追従的な行動の蔓延などにより、職員の士気が低下して清新な県政が期待しがたくなること。四、知事と議会の間に一種のなれ合いが生じ、県政についての正常なチェック・アンド・バランスが保たれなくなるおそれがあること。五、府県別の割拠主義に陥りやすく、国全体の見地に立つ施策が行われにくくなるおそれが生ずること。六、多選のために長期にわたって政策が偏り、財源の効率的使用が阻害されること。七、知事は、公務として、しかも公費負担で至るところに顔を出す機会が多く、在任中に事実上の選挙運動が行われる結果、現職有利の構図を現出させ、選挙が公正に行われにくく、選挙そのものの基盤が信頼しがたいこと。八、したがって、新人の交代による人材の発掘が困難となりがちであること、などに代表される弊害が指摘されてきました。
 もちろん、これらの問題点は、必ずしも多選によってのみ生ずるわけではなく、前回、知事が反論されましたように、首長本人の問題という部分が大きいというのも一面の事実であろうと思います。しかし反面では、やはり多選によって多少なりともこうした弊害が知らず知らずのうちに助長されたり生み出されてくる傾向は否定できないのではないでしょうか。いかにみずからを厳しく律しても、人間はだれしも完全無欠ではなく、基本的には弱い存在であり、だからこそ権力者は常に孤独であると言われるゆえんでもあります。
 まずは、このような弊害が多選にも起因していることについて、知事の御認識をお伺いいたします。
 ところで、たとえそのような多選による弊害があるにしても、選挙で住民が自主的に判断するのであるから、民主主義の制度上、差し支えないのではないかという反論もありますが、前述しましたように、民主主義制度も、あくまで人間の権利、自由を保障するためのものであり、その保障のために多選を禁止することは民主制に矛盾するものではなく、しかも多選制限が法律や条例によってなされるということは、最終的には国民や住民の多数意思を基盤として実施されるわけであり、問題ないものと思われます。
 一方、多選を禁止することについては、もちろん多くの反対意見もございます。その理由として、昭和三十九年に示された全国知事会の見解などを中心にして例を引きますと、たとえ多選の弊害が存在するにしても、それに対する選挙民の監視は厳しく、自然淘汰されている事実を指摘しているほか、一、多選の弊害は抽象的であり、かつ誇張されていること。二、多選の点について知事を市町村長と区別する理由がないこと。三、多選の弊害は選挙民の自主判断にゆだねるべきであり、法律でこれを禁ずることは憲法違反の疑いがあること。四、多選知事のもとでは行政の長期計画が一貫して遂行でき、すぐれた人物が長期にわたって存在するなど公選制の利点が強くあらわれていること。五、多選を禁止しているアメリカの大統領や州知事などとの比較で考えるのは、双方の機能、権限から見て適切とは言えないこと。六、最終任期の末期にはいわゆるレームダックの弊害が生じること、などが指摘されております。中でも多選禁止反対の最も強い論拠になっているのは、三つ目に挙げた、法律による規制は憲法違反の疑いがあるというものであります。しかしながら、既に述べましたように、多選を禁止することは、憲法の保障する人権を侵害するものではなく、むしろ立憲主義や民主主義の理念に適合するという考え方の方が今や支配的であり、機能次元の権力の分割としての三権分立、空間次元の権力の分割としての地方分権に加えて、更に時間的な次元レベルでの権力分割として多選の禁止を位置づけることが必要であります。実際、後にも詳述しますが、昭和三十九年、衆議院法制局は、多選禁止を立法化しても違憲ではないという見解を示しており、当時の法制局長は次のように述べております。「知事の長期在職に伴い種々の弊害がある場合に、これを阻止する方法として住民のリコールの方法もあるが、その弊害が制度自体に内包していて、制度的、必然的にそういう事態が長期在職に伴ってあり得るという見方が成り立ち得るとすれば、そういう観点からこれを制約することは、地方自治の本旨、原則に沿うゆえんであり、憲法の言う公共の福祉の要請に沿うと考えられる」といたしております。
 そもそも知事御自身は、多選禁止は憲法に違反するとお考えになっていらっしゃるのかどうか、お伺いいたします。また、そうではなく、もし知事が、憲法は多選を禁止することを許容しているという立場に立ちつつも、現在の諸状況を顧みる中で、立法政策上、不適当であるとお考えになっているのか、御見解をお尋ねいたします。
 例えばアメリカでは、ルーズベルト大統領が四選したのを最後に、一九四七年に三選禁止の憲法改正を行っていることは広く知られているところであります。更に、現在では五十州のうち七六%に当たる三十八の州では、州知事の多選を無条件又は連続的に行うことを州憲法で禁止しており、そのほとんどの州では、大統領と同じように二期八年までとし、三選禁止になっております。また、知事に限らず、州議会議員や州選出の上下両院の連邦議会議員についても、九〇年にオクラハマ、カリフォルニア、コロラドの三州で初めて立法化されて以来、既に半数以上の州で多選禁止の任期制限を実施しており、最長の州でも十二年までとなっております。このような権力の制限による新陳代謝によって政界にダイナミズムを与え、活性化させているアメリカの分権思想に学ぶ点は多く、その最大のものが、首長の時間的分権であると言えるのではないでしょうか。
 ほかにも、ドイツでは、大統領の連続しての三選を禁止しているのを初め、メキシコやフィリピンでは、一期六年限りとし、再選禁止を定めているなど、多くの国々で採用されていることは、いかにして民主主義の成熟化を進展させ、それをベターなものから、よりベストなものにしていくための方策として積極的に評価すべきだと思います。
 さて、六月二十二日のきょう現在、全国四十七都道府県知事の多選状況を見てみますと、就任回数六回がトップで、富山、大分、宮崎の三人。五回は該当がなく、次いで四回が福島、福井、岐阜、京都、兵庫、島根の六人になっております。三期十二年で勇退した前島根県知事の恒松氏は、多選が長期化したときの最大の問題は、汚職にも通ずるよどみが生じ、何事も首長のツルの一声で決まりようになり、その取り巻きも自分の利益を守るために首長をやめさせないようになると述べております。ほかにも、新しい時代には新しい人をと言って四選出馬しなかった竹下前広島県知事や、権不十年を信念に二期八年で知事を辞した細川元首相などのように、当時、余力を残しながらみずから身を引く知事が少なくない反面、過去には八期途中まで務めた知事が二人、七期務めた知事が一人おりました。中でも、知事在職八期三十一年という最長記録を残して亡くなった中西前石川県知事の場合、その後援会長が現職のベテラン県議だったということを聞くに及んで、驚きを禁じ得ない思いがいたします。
 私はまた、多選禁止の対象を首長に限定するのではなく、さきに紹介しましたアメリカのように、各自治体の自主的な判断によって、国会議員や地方議員についても多選を制限していくべきだと考えております。ただし、議会は多数で構成される合議機関であり、独任制の執行機関である首長とは異なり、権限の集中の問題を考慮する必要性が希薄なこともあり、その任期については、私が理想とする首長の任期の場合の二倍に当たる通算二十四年の六選までが限度ではないかと考えております。もとより議会の自律的な判断にゆだねられるべき問題ではありますが、知事は、国会議員も含めた議員の多選禁止についてどのような御見識をお持ちでしょうか。
 いずれにいたしましても、今後、特に首長の多選禁止の制度化は、地方分権の見地からも必要性の高い課題であり、現代日本の地方政治の中でどのように組み込んでいくべきでしょうか。
 冒頭でも既に述べましたように、私は、法律で全国一律に制限するのではなく、禁止する期数を含めて、それぞれの自治体の条例による自主的な固有の判断にゆだねるべきであると思います。その際には、具体的な期数制限として、三期十二年までの四選禁止条例が最も適当ではないかと考えております。
 以下、その根拠を御説明いたします。
 まず第一に、そもそも法律や条例で多選禁止をすることは、憲法上の問題を含めて立法政策上も可能なのかどうかという点であります。旧自治省選挙課の見解は、地方自治法第十七条では、長の選挙については公職選挙法の定めによるとしており、現在の公選法には長の多選禁止規定が定められていない。ゆえに、公選法に何らかの委任規定がない以上、条例で定めることについては、公選法に抵触するものと思料されるとして、現行法の中においては難色を示してきました。したがって、多選禁止の条例化は、上位法である公選法を改正すれば可能であり、長の任期について条例への委任規定を加えれば何ら問題がないものと考えられます。
 また、法改正が違憲かどうかについては、既に指摘しましたように、かつて衆議院法制局が示した判断では合憲であり、憲法学者の宮沢俊義氏なども違憲には当たらないとしております。すなわち、首長の多選禁止は、憲法第十四条の平等原則、第十五条の普通選挙の保障、第二十二条の職業選択の自由、第九十三条一項の直接選挙権のいずれの条文にも抵触するものではなく、むしろ民主主義や立憲主義の本質に沿うもので、憲法の趣旨に合致するとして積極的に評価されております。
 第二に、法律による一律的な制限ではなく、なぜ条例なのかという点であります。
 過去に国会に提案された三選ないしは四選禁止の法案では、全国画一的に知事の任期を制限しようとするものでした。しかしながら、我が国には三千を超える自治体が存在しており、都道府県を見ても、人口六十万強の鳥取県から、一千百万を超える東京都まで存在しており、その統治システムを均質的に論じるには無理があります。例えば、かつてプラトンは、その著書「国家」の中で、理想的な自治規模は人口五千人ぐらいであるといい、これは、たった一人の演説家の声が聞き取れ、直接政治参加できる適正な人間の数を示したものでありました。町村のような比較的小規模な自治体では、何といっても住民が直接、首長をコントロールすることが可能ですが、宮城県のように人口二百三十万人を超え、特定の人を除いては知事に直接お会いする機会すら限られており、多選の弊害が顕在化しやすいために、より前向きに多選禁止を考えていかなくては地方自治の本旨が十分発揮できなくなるということは、これまで申し上げてきたとおりでございます。
 その意味で、それぞれの地方自治体が、その政治風土や状況に応じて多選禁止の必要性を主体的に判断し、民意に応じて自治体固有の条例によって制度化するのが望ましいのではないかと確信いたしております。また、そうすることによって、知事の多選禁止反対の論拠の一つになっている、知事と市町村長を区別する理由がないという意見も正当性を失うことになります。
 第三点目として、禁止する期数はなぜ四選が適切なのかという点であります。
 何選をもって多選禁止とすべきかについてはさまざまな意見がございますが、私の考えでは、仮に、一期目は前任者の施策の継承発展、二期目はみずからの政策理念に基づく計画の策定、三期目はその実現というふうに、実態上の経験則を踏まえるならば、二期八年では若干不十分であり、少なくとも十年、三期十二年ぐらいが適切ではないかと思います。また、前述しました多選の弊害の多くが就任十年目以降に顕著になる傾向があることを考慮しても、やはり四選禁止が望ましいのではないかと思われます。
 以上のような理由からも、私は民主主義と地方自治のあり方を、より健全に、より公正に機能させていくために、条例による首長の四選禁止を推進すべきと考えております。
 知事は、まず、法律による一律の多選禁止についてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。また、法律による一律的な禁止ではなく、各自治体の判断が尊重され、条例への委任によって個別に多選禁止が可能なように関係法の改正が必要だとの御認識をお持ちかどうか、お示しください。
 更には、もし必要であるとお考えならば、基本的にはおのおのの自治体の長や議会が判断していくべき問題ではありますが、自治体の規模によっても必要性の度合いが異なってくるのではないかという論点についてはいかがお考えでしょうか。
 加えて、知事御自身は、何期以上が多選に当たるとお考えでしょうか。
 同時に、知事は現職の知事として、みずからを拘束することにもなる多選禁止について、条例化による制限が立法的に可能になった場合、これを制定していこうとする御意思や御熱意をお持ちでしょうか。知事の率直かつ明快なお答えを期待するものであります。
 ところで、立法政策上の論点として、多選による弊害を除去するほかの方法としては、選挙運動の方法や量などに差を設けて当選該当者の当選のための条件を厳しくする方法や、多選該当者に対する挑戦立候補者の選挙費用についてより多くの公費助成をするといった方法なども考えられております。私はこうしたことについても一つ一つ問題点をクリアしながら前向きに検討していくべきだと考えていますが、知事はどのように思われますでしょうか。
 私は、全国の自治体における情報公開の潮流を決定づけてきた浅野知事の取り組みを高く評価いたしております。また、しばしば議会軽視といった批判の声も聞かれますが、例えば議会に対していわゆる根回しをしないなどといった知事の政治姿勢や、特定の会派に偏ることなく適切な距離を置こうとするその政治姿勢は、地方自治体が二元代表制であることを考えれば、むしろ本来的には好ましいものだとも思っております。そうした知事だからこそ、今回再び私が取り上げてきた課題についても、ぜひ意欲的なリーダーシップを発揮していただきたいと期待してやみません。
 これまで大変残念なことに、過去の多選禁止をめぐる議論の背景には、その時々の政治的な思惑が見え隠れいたしておりました。初期においては、中央政府が地方自治体へのコントロールを強化したいがために多選禁止に賛成したり、その後には、保守系多選知事が多く存在したため、多選禁止は身内の首を切ることになるとして、与党内から反対の声が高まったりいたしました。しかしながら、多選禁止の問題は、中央対地方の発想や政党の党利党略の思惑で是非を論ずるならば、必ずやその本質を見失うことになります。多選禁止の問題は、あくまでも立憲主義や民主主義の理念、地方自治のシステム向上への課題として、そして時間次元の権力分割論の視点に立脚して、更には地方分権の観点から公正にその是非を論ずべき問題であろうと信じております。
 すべての政治権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗すると喝破した、十九世紀イギリスの歴史家であり貴族院議員であったジョン・アクトンの言葉は、いまだにその真実を言い当てており、それがゆえに、とりわけ宮城県のような大規模自治体においては、首長の多選禁止の条例化が必要であると確信いたしております。
 質問の最後に、知事は、この秋の三度目の立候補を控え、多選禁止の制度化を選挙公約の一つに掲げるお考えをお持ちかどうかをお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。
○副議長(錦戸弦一君) 知事浅野史郎君。
    〔知事 浅野史郎君登壇〕
◎知事(浅野史郎君) 秋葉賢也議員の御質問にお答えをします。
 首長、議員の多選禁止問題一点に絞っての御質問でございます。順次お答えをいたします。
 議員からは、四年前、平成九年の六月のこの場において同様の趣旨の御質問がございました、かなり明確に記憶をしておりますが。したがって、若干繰り返しの部分もあろうかと思いますが、改めてお答えをいたしたいと思います。
 まず、これまで指摘されてきております多選の弊害について、例を挙げてお尋ねがございました。具体的な八点でございました。
 多選の是非については、さまざまな議論がございます。また、その首長みずからが多選を望まないということを表明している例も見受けられるわけであります。賛成である、反対であるという考えや、また、首長みずからが自分の意思を表明するというのは、これはもちろん自由であります。
 私の考えでありますが、私の考えといたしましては、ただいま秋葉議員から御披露された多選の弊害については、以前にも申し上げましたが、必ずしも多選ということのみに起因するとは言い切れないのではないかと。むしろ、その人自身のトップとしてのあり方の問題の方が大きいのではないかと考えております。
 次に、憲法問題でありますけれども、多選禁止というのを立法化するということは憲法上認められるかどうかということでございます。これは、ちょっと私の手に負えないような難しい問題であるとは思います。衆議院法制局では合憲だということを言ったことがあるという御披露もございましたが、一方、職業選択の自由、公務員の選定及び罷免権、法のもとの平等と、これも憲法上、定められているわけでありますが、そういったものとの関連で、多選禁止というのを立法化するということは、憲法上認められないのではないかという見解があることも承知をしております。つまり、この問題については、憲法上の問題というのに甲論乙駁というような状況になっているということだろうと考えております。その意味では、私に聞かれてもちょっと困るという部分がございますけれども、その判断については、ちょっとこの場で、こうであろうという憲法上の見解を申し上げるということは困難だろうと考えております。
 次に、国会議員も含めた議員の多選禁止についてはどうかということでございますが、これは首長の場合もそうでありますが、議員の場合についても、多選禁止というのを法律なり条例なりで一律に決めるということについては、私は消極的であります。いかがなものかというふうに考えております。
 多選を是とするか非とするかということを一律に決めるという議論よりは、その人自身の気力、体力とか、有権者である住民の負託に十分にこたえられるだけの力量があるかどうか、また、政治姿勢はどうかといった、その人自身の中身で評価されるべきものではないかというふうに考えております。
 次に、法律による多選禁止についての御質問であります。
 多選の弊害の問題というのが仮にあるといたしましても、その解決のために法律で一律に禁止をしてしまうというのではなくて、これは首長みずからの判断と対応によることが望ましいというふうに考えております。したがって、これはもちろん条例で禁止をするということにも通じるわけでありますので、条例による多選の禁止ということも、むしろ首長みずからの判断と対応によることが望ましいということを考えております。
 したがって、次の質問もお答えは同じになるわけでございますが、つまり、何期以上が多選に当たるのかというふうにお尋ねがあったわけでございますが、今まで申し上げてきましたように、一定の当選回数が来ればこれで終わりという、一律に制限をするという考え方そのものに同調をできかねるというのが私の率直な考えであります。したがって、私からすれば、その任を務められない、あるいはその任にあるべきでないというふうに判断したときが一つの節目であろうと考えております。
 次に、多選が選挙に有利であり、その弊害を除去するために、選挙運動の方法などに差を設けてはどうかという御質問でありますが、これは、このところ特にそうですけれども、多選が本当に有利かどうかというのは、これは状況かなり変わってきたと思います。四年前と比べましてもですね。したがって、そういうことを考えれば、多選の者と新人とで、制度として規制や助成を行うというのは、双方ともこれはいろいろ問題があるのではないかというふうに考えております。
 最後になりますけれども、私自身について、三選目の立候補を控え、多選禁止の制度化を選挙公約の一つに掲げる考え方があるのかという御質問でございますが、これにお答えをすることは、何か別なことにお答えをすることにもなるわけでございますが、私としては、任期ことしの十一月二十日までというふうにこれは決められているわけでありまして、そこまでの残された任期を全うしたいということで、全力で県政運営に当たることのみをただいまのところは考えているということを申し上げたいと思います。
 以上でございます。
○副議長(錦戸弦一君) 二十番秋葉賢也君。
◆二十番(秋葉賢也君) 御答弁ありがとうございました。四年前と比較をいたしまして余り進展のない結果だったんで、少し残念です。
 私、本当にまじめに、正直に申し上げて、浅野知事だからこういう質問をさせていただいているという部分が多分にあります。すなわち、これまで過去のいろんなしがらみや規制を断ち切って、いろんな改革に前向きに取り組んできた。そんな知事だからこそ、こういう問題にもリーダーシップをぜひ発揮していただきたい。そして、前向きに挑戦していただける可能性を浅野知事に感じているからこそ、こういう質問をさせていただいていることを、ぜひ冒頭、御理解いただきたいと思うんです。
 そういう意味で、例えば二点目の、違憲かどうかという問題については、私も論旨で述べましたように、当然、二通りの考えがあるわけです。私はあくまでも、違憲じゃない、合憲だと。いろんな見方がありますけれども、それらを受けて、自分はこうじゃないかという、知事御自身のですね……。確かに難しい問題ですけれども、自分はA案ではないかといったような意味で、御自身のお考えをざっくばらんに言っていただきたいと思うんですね。両々があって難しいからというんじゃなくて、自分は、じゃ、どっちに近いのかということぐらいは言えるんではないかなというふうに思います。
 それから、ちょっと細かい話で、知事の答弁にも包含されていると言ってしまえばそれまでなんですが、きょう、私は、自治体の規模によっても、条例に全部委任するといっても、必要性の度合いが違うんじゃないかということを申し上げました。基本的には、自治体のもちろん大小に関係なく、それぞれの自治体の首長さんなり固有の問題ではあります。もちろん首長本人の問題でありますけれども、ただ、一般論として、大きな自治体では私は必要じゃないかという立場を申し上げましたので、知事におかれましても、自治体の大小による必要性の温度差ということもあるんじゃないかと。これについてどう思っていますかと申し上げているわけでありまして、この部分について、あくまでも自治体の判断だということでの答弁で終わっておりますので、規模の問題についても言及をいただきたいと思います。
 それから、三つ目に、知事は、何期以上が個人的には多選に当たると思いますかということをお聞きしたんですが、これもいろんな考えがあって一概に言えないという御答弁だったんですが、読売新聞が行った、四年前になりますでしょうか、全国の都道府県知事を対象にしたアンケート調査を拝見いたしますと、読売新聞ではこうこうと聞いているんですね。何期以上が多選に当たりますかという問いに対して、浅野知事は、はっきりと五選以上だと答えているわけですね。五選以上という数字で答えているわけですが、なぜ読売新聞には五選が多選に当たると答えていて、きょうのこの議場では明確なお答えがなかったのか。四年前と今と考え方が違ったのかどうか。その辺も教えていただきたいと思います。
 一方で、知事は多選の弊害というのももちろん認めているわけでございますので、秋田県議会も本県と同様に今、開会中のようなんですが、きのうの秋田県議会での一般質問に寺田知事は答えて、この九月に更に実現に向けて具体化していくための研究会を設置をするということを表明いたしております。きょうの知事のお話を伺っておりますと、なかなか慎重な立場だと思いますので、そういった検討会の設置ということについても慎重だというふうに受けとめさせていただきますけれども、ただ、先ほど紹介しましたアンケート調査を見ておりますと、四十七都道府県のうち十人以上の知事が、もう弊害があると。そして、そのうち三人が多選を理由に引退するつもりだというふうに答えているわけでありまして、特に多選についての制限が必要だという知事も何人かいらっしゃいます。こういう知事さんたちと、全国知事会の場で全体では議論するようなテーマになじまないわけですから、一つの任意の研究会のようなものを、具体的に言いますと、熊本県の知事とかですね。もちろん寺田知事はもちろんですけれども、何人かいらっしゃいますので、こういう知事に呼びかけて、一律で禁止をするというやり方には反対だと。しかし、各条例の判断でできるようにはしてもいいんじゃないかという観点から、議論をしてみるというお考えはございませんでしょうか。
 あと、ほかにも更に伺いたいことはありますけれども、まずこの辺にしておきたいと思います。
○副議長(錦戸弦一君) 知事浅野史郎君。
    〔知事 浅野史郎君登壇〕
◎知事(浅野史郎君) 秋葉議員からの再質問にお答えをいたします。
 ただいまもお答えをはっきりしたつもりでございますが、まずは、私は多選禁止は、独自の条例であれ、やることは反対ですということをはっきり申し上げました。いかがなものかというのは、反対ですという意味です、今の考えでは。ですから、四年前と変わっていないではないか。これは一つの信念でございますので、そう簡単には変わらないということと、浅野知事だから期待しているというふうにおっしゃられましたけれども、まさに今の話というのは、もうすぐにおわかりになりますように、私自身の身分にもかかわってくるお話をされているわけですから、これは、ある程度、その辺は推測もされてのお尋ねではないかというふうにも推測をしております。
 そこで、お答えしますが、憲法上の問題ですね、確かに、私は学者的な観点からはよくわかりませんが、これが違憲かという方は余り強く考えてはいません。立法上の問題として考えられるのではないかという方に傾きつつあるというか、そういう方が説得力があるのではないかというふうには思っておりますが、確定的にはよくわかりません。
 それから、二番目、三番目も実は同様でございますけれども、自治体の規模によって決めたらと。これも、そもそも多選禁止というのをやるのは反対ですというふうに言っておりますので、そもそもお答えができませんというか、入りません。
 多選は何期までかと。読売新聞に対する回答というのは、ちょっとはっきり覚えていないんですけれども、五選以上を多選と言うと。それを、禁止すべきと言ったかどうかというのはよく覚えていないんです。多選というふうに大体言われる、ある程度の長さというのはどのぐらいかというのは、これは五選以上というのを言うんじゃないかなと。それは、じゃ一律に禁止すべきかということまで、どうも聞かれたという記憶がないので、ちょっと、そこを、今、手元にないし、記憶がありません。
 それから最後に、条例で独自に決めたらいいじゃないかということについても、私はそれは念頭にありませんので、そのことについても否定的にお答えをするしかございません。
 以上でございます。
○副議長(錦戸弦一君) 二十番秋葉賢也君。
◆二十番(秋葉賢也君) 知事に、条例で可能になった場合でもその意思がないということが明快になったもんですから、私もそういう意味では、そうですかということになるわけですが、ただ、さっきの五選云々に関しましては、これは、だから禁止云々じゃなくて、もちろん何選以上が多選に当たると思うかという問いかけに対しては、知事は明確に五選以上だと。禁止する、しないは別にしてですよ、五選以上が多選ではないかというふうにお答えなったのは間違いないと思います。
 ただ、私、最後に申し上げたのは、その意思がないので研究会を立ち上げるつもりもないということにはなるんだと思うんですが、一方で、同様の読売のアンケートによりますと、法令で制限することに賛成するかということについては、反対という回答にはなっていないんですね。一概に言えないという回答になっているんですよ。ということは、きょうの答弁で反対だということが明らかになったんで、そうなんだなということにはなるんですが、なぜ四年前、法令や条例で賛成することに賛成するかという問いに対して、反対という選択肢もあったのに、この時点では、一概に言えないというふうにお答えされたんでしょうか。記憶も明確じゃない部分があるかもしれませんが、その辺、もう少しお聞かせいただいて、再々質問を終わりたいと思います。
○副議長(錦戸弦一君) 知事浅野史郎君。簡潔にお答えください。
    〔知事 浅野史郎君登壇〕
◎知事(浅野史郎君) 今の一点の質問には、記憶がちょっとはっきりしないというふうにお答えしなくちゃいけないんですが、改めて、そのアンケートはアンケートとして、今の私は、多選禁止というのを何かの形で決めるというのは反対であるということを繰り返したいと思います。